老後資金はいくらあれば安心?

老後資金はいくらあれば安心かという問題は、近年大きな社会問題となっています。公的年金の支給額が減少する一方で、医療費や介護費などの負担が増加する傾向にあり、老後の生活費が不足する可能性があるからです。

厚生労働省の「平成29年社会保障審議会年金部会」では、2020年時点での65歳時点の平均的な年金収入は月額22万円とされており、総務省の「家計調査」によると、同年時点での65歳以上の二人以上の世帯の平均的な生活費は月額31万円となっています。このことから、公的年金だけで老後生活を送るのは難しいことがわかります。

では、老後資金はいくらあれば安心なのでしょうか。厚生労働省は、「老後の生活に必要な費用は、老後の生活スタイルによって異なるため、一概にいくら必要とは言えない」としています。しかし、同省は、老後の生活費を月額22万円と仮定して、公的年金の支給額を差し引いた不足分を試算しています。その結果、単身世帯では約2,000万円、夫婦世帯では約3,000万円の不足が見込まれるとしています。

この試算は、あくまでも目安であり、実際の必要額は、以下の要因によって大きく異なります。

  • 収入状況
  • 家族構成
  • ライフスタイル
  • 健康状態
  • 年金の受給額

収入状況が豊かな人は、老後資金を貯めやすいでしょう。また、家族構成が単身世帯であれば、夫婦世帯よりも生活費を抑えることができます。さらに、ライフスタイルが簡素であれば、生活費を削減することができます。一方で、健康状態が悪ければ、医療費や介護費などの負担が増加する可能性があります。また、年金の受給額が低ければ、老後資金の不足分を補うために、より多くの貯蓄が必要となります。

このように、老後資金の必要額は、個人の状況によって大きく異なるため、早めにシミュレーションを行って、ある程度の目安を立てておくことが大切です。

シミュレーションを行う際には、以下の点に注意しましょう。

  • 老後の生活費を具体的に算出する
  • 公的年金の受給額を正確に把握する
  • 医療費や介護費などの負担を想定する
  • ライフスタイルやリスクを検討する

老後の生活費を具体的に算出するには、家計簿をつけて、現在の生活費を把握するのが有効です。また、公的年金の受給額は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認することができます。医療費や介護費などの負担は、将来の経済状況や健康状態によって大きく変わるため、あくまでも目安として把握しておきましょう。また、ライフスタイルやリスクを検討する際には、以下の点に注意してください。

  • 旅行や趣味など、老後にどのようなことをしたいか
  • 子どもや孫の援助など、家族への支援が必要か
  • 病気や介護などのリスクに備えるか

シミュレーションの結果、老後資金が不足する場合は、以下の方法で不足分を補うことができます。

  • 預貯金や保険などの貯蓄を増やす
  • 退職金や遺産などの一時的な収入を活用する
  • 老後資金の準備を兼ねて、副業を検討する
  • 公的年金の繰上げ受給や在職老齢年金の利用を検討する

老後資金の準備は、早ければ早いほど有利です。30代から40代のうちに、ある程度の貯蓄をしておけば、その後の貯蓄ペースを緩めることができます。また、若いうちから老後の生活について考えることで、ライフスタイルやリスクを検討しやすくなります。

老後資金の準備は、自分自身で行うことが基本です。しかし、一人で考えるのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談するのも一つの方法です。ファイナンシャルプランナーは、個人の状況に合わせて、最適な老後資金の準備方法を提案することができます。